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妹尾河童『河童が覗いたヨーロッパ』

今週のお題「人生に影響を与えた1冊」

一冊だけ選ぶならば、これ。

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『少年H』の作者、舞台美術家妹尾河童が主にヨーロッパ22カ国を旅したルポエッセイ。文化庁助成金で海外派遣されたときに旅の記録をしたためていたものが、帰国後友人たちの間で評判となり出版されたという経緯がある。

各国の安宿を天井から俯瞰した図と各都市の印象を記したページが大半を占め、ホテルの部屋、窓、はてはビデといったところからこんなに地域性が読み取れるのか!と感心することしきり。筆者の「覗き」の鋭さに驚く。

ドイツが東西に分かれ、ロシアはソビエト連邦だった時代、もちろんEUもない。おそらく今よりももっとヨーロッパ各国の差異が際立っていたのだと思う。国境を越える列車で見た車掌さんたちのスケッチ、各国の寝台車のスケッチも面白い。

一冊に通底するのは、「自分と他者との差異にどう向き合うか」という視点だと思う。

あとがきに

日本もヨーロッパと同じであるべきだというつもりもありません。日本は日本。ヨーロッパはヨーロッパであるからです。ただ一ついえることは、日本がこれからも、ヨーロッパのものを見たり、つきあったり、大きくは外交や貿易をするにしても、彼等の考えかたを少しでも知ろうとすることや、ナルホドと思えるものは取り入れてもいいのではないかと思ったことです。

とあるように、距離を保ちながら謙虚な姿勢で「覗いた」記録。初出は昭和51年、1976年。およそ40年以上昔に書かれたものでありながら、グローバリゼーションが進むに連れ読んで感じるところも多くなっていくのでは。よし、妹尾河童が感じた差異を私も感じに行こう、と初めての海外旅行にヨーロッパ、パリを選ぶきっかけとなった一冊。

ちなみに妹尾河童の『覗いた』シリーズはどれも素晴らしい。このヨーロッパ編は最初の一冊なんだけど、以後インド、ニッポン、トイレを「覗いた」記録が出版されている。『河童が覗いたトイレまんだら』では、タモリ邸のトイレも覗かれている!

河童が覗いたヨーロッパ (新潮文庫)

河童が覗いたヨーロッパ (新潮文庫)

 

 

 

河童が覗いたインド (新潮文庫)

河童が覗いたインド (新潮文庫)

 

 

 

河童が覗いたニッポン (新潮文庫)

河童が覗いたニッポン (新潮文庫)

 

 

 

河童が覗いたトイレまんだら (文春文庫)

河童が覗いたトイレまんだら (文春文庫)