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浮いたり沈んだり

松浦理英子『ナチュラル・ウーマン』

一気呵成に読みながらエネルギーを吸い取られるのがわかり、読了後には大きな疲労感が残ったが、筆者の筆力に飲まれるまま読めたことに清々しい気持ちを覚えた。

私が読んだのは1994年に河出書房新社から刊行されたもので、『いちばん長い午後』『微熱休暇』『ナチュラル・ウーマン』の順に三篇が収められている。

いずれも主人公の容子と女性たちの物語で、恋愛とも肉体関係とも言い難い関係性が丹念に描かれている。容子とその相手の女性たちとの間には何かしらの関係はあるのだが、私はそれらに名前をつけることや、何かしらの名で呼ぶことを拒みたい。果たしてこの情動は肉体が呼び起こしたのか、感情の変化が快楽や痛みを引き起こしたのか。卵と鶏の間柄のように考えてもきりのない問が浮かんだ。

登場人物たちの年齢に反して最も若々しくみずみずしさを感じさせる『いちばん長い午後』、表題もストーリーも気怠くそしてさわやかな『微熱休暇』、エゴとエゴ、人間同士のぶつかり合いが緻密に描かれた『ナチュラル・ウーマン』。

おそらく、これらを書き上げるために筆者が消費した熱量は相当なものだろうなと感じさせる。実際は軽々と書かれているのかもしれないけれど。

淡々と描かれる激情に飲み込まれ圧倒され、私はナチュラル・ウーマンであったことがあるだろうか、こんなに他人とともにいた経験があるだろうか、様々な感情を持ったことがあるだろうか、と内省させられる一冊。

ナチュラル・ウーマン (河出文庫)

ナチュラル・ウーマン (河出文庫)