観たり聴いたり

浮いたり沈んだり

温又柔『真ん中の子どもたち』

日本人と台湾人夫婦の間に生まれた女性が主人公の青春群像劇。母語とは?国境とは?言葉とアイデンティティの関係や国籍、そしてなにより青春を描いた話。

イギリス英語、アメリカ英語、またシングリッシュなどのことをEnglishes と言うけれど、それ以上に多様な言葉の違いが中国本土と台湾にはあり、中国本土の中でも上海語や広東語、北京語と多様な言葉がある。どの言葉を正しいとするかは時と場合によるのだろう。主人公の女性は日本語の読み書きもし、台湾人の母が使っていた台湾の言葉も理解するが、上海に中国語を学びに行く。今まで覚えてきた言葉とは異なる中国の「普通語」に戸惑う主人公。「国籍」や「母語」、また「正しい言葉」に対する考え方がそれぞれに異なる登場人物たちとかかわる中、主人公の心中は揺れる。

偶然にも読む前日に見た放送大学パレスチナ文学を扱っており、言葉と祖国とアイデンティティについて考えていたので響くところが大きかった。将来的に日本が日本という国でなくなることがあったとして、その時自分が生きていたらアイデンティティを何に依拠させるのだろう、国や国境についてどんなスタンスでいるのだろうと思考を巡らせていたので。私の祖父は日本人だが、日本統治下の台南生まれ台南育ちなので、もし違う歴史があれば私は台湾に生まれていたかもしれないし、自分に台湾の血筋が入るような現在もありえた。ifを並べ出せばきりがないけど、たまにそういうことを考える。また小中高と中国籍の子や日本籍の日台ハーフの子と仲が良かったのもあって、自分ごとに引きつけて読んでいた。

宮本輝芥川賞の選評でこの作品について「日本人にとっては対岸の火事」と言ったそうだが、え、世界文学とか全否定してることになるけど本当に大丈夫????と笑ってしまった。筆者もこんなくだらないことで心中乱されて大変気の毒だとしか言えない。

説教臭く、重く硬くなりかねない題材だと思うんだけど、青春のきらめきを描く筆者の視点は温かく柔らかで、読後は晴れやかな気持ちになった。早速筆者の他の本も買いました。もっといろんな作品を読みたい、追いたい作家。

余談だけど、作中で主人公の母親が作ってくれる水餃子が本当に美味しそうでどうしても食べたくなり、読んだ直後に水餃子を買って帰った。これから読む人もきっと食べたくなると思うので書いておくと、大阪王将の「ぷるもち冷凍水餃子」、とても美味しいのでおすすめ。

真ん中の子どもたち

真ん中の子どもたち

 

 

E TICKET RAP SHOW

初期ライムベリーをプロデュースしてた、 E TICKET PRODUCTION のアルバム。ボーカル・ラップで参加してるのは吉田凛音椎名ぴかりん、ゆるめるモ!のようなぴ、など女性アイドル。一曲目の『りんねラップ』からものすごくかっこいい


吉田凜音 - りんねラップ ミュージックビデオ(short ver.)

吉田凛音の巧さだけで持っていってるのかと思っちゃうけど、2曲目のGOES ONはかわいらしく、ようなぴの声と合ってる。3曲目、虹のコンキスタドール根本凪を迎えたアウトラウドは少し寂しく切ないメロディーと詞が良い。根本凪の憂いある表情が浮かぶ

全曲何かしら書こうとしたけどやめた、このティザー音源聴くと、かっこよかったりかわいかったり切なかったり楽しかったり、いろんな表情の曲と女の子に溢れていて、ただただいいなあ!というのが少し伝わると思う


E TICKET PRODUCTION 1st mini ALBUM「E TICKET RAP SHOW」 DIGEST TRAILER

E TICKET RAP SHOW(通常盤)

E TICKET RAP SHOW(通常盤)

 

映画『スラムドッグ$ミリオネア』

アマゾンプライムにて。

娯楽大作であり貧困や人間ドラマが描かれた綺麗な作品だった。

ジャマール役とラティカ役の役者さん、2014年まで付き合ってたのだね。ジャマールのまっすぐな瞳、ラティカの澄んだ瞳が印象的。どうにかして生きるしかない日々とか人生とか、過酷な環境を過酷と思えるのはそれ以上に「恵まれた」環境にいる立場だからだけど、そんな上から目線のオリエンタリズムに阿ることなく安易なお涙頂戴になってなかったのがよかった。

ラストのダンスシーンが始まった瞬間笑ってしまったけど、楽しく見られた。このシーンを入れたのは、インド映画としての監督の矜持なのかもな、と思った。

スラムドッグ$ミリオネア[Blu-ray]

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映画『恋する惑星』

ウォン・カーウァイ監督の言わずと知れた名画、初めて観た。

フェイ・ウォンは日本ドラマの『ウソコイ』や Eyes on me で知ってたけど映画では観たことなかった。重慶大厦のことはこの間NHKドキュメント72時間を見て多少知ってたので、無国籍無秩序な感じは90年代から変わらないんだなと思った。映画は香港の、そしてフェイ・ウォンのプロモーションビデオみたいだ。

単に美しいとか楽しいとかいう単語では表せず、映像で初めて伝わる圧倒的な香港のエネルギー。きっと今の香港は当時のような返還前の香港ではないのだろうけど、香港に行きたくなる。

フェイ・ウォンはキュートで奔放で魅力的。彼女が歌う劇中歌「夢中人」、とてもかっこいい。


恋する惑星 Faye Wong フェイ・ウォン 夢中人

あと、ここ数年で2度訪れた台北のことも思い出して行きたくなった。エネルギッシュで最新の高層ビルと古い街並みとが隣り合い、不思議な洗練やかっこよさがある素敵な街。今の香港と台湾を比べてみたいな。

恋する惑星 [Blu-ray]

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映画『クーリンチェ少年殺人事件』

先日やっと観てきた。

切り口を色々学ぶと多面的に観られる映画なのだろうけど、それよりも今は自分に響いた極めて個人的な感想を大事にして、自分の中で消化していたい。まだ本作を観ていなくてこれを読んでいる人がいらっしゃったら、ここから先は読まずにネタバレも何もなく観た方がいい。「個人的な感想」というものが幾通りも生まれる映画だろうから。

以下私的な覚書、感想。

他人に一方的に期待して一方的に裏切られた気になって一方的に感情をぶつけてしまうっていう、ディスコミュニケーションを真正面から見せつけられてぞっとした。

思春期映画、異邦人の映画、とかいろんな見方がある映画なんだろう。しかし、強く思ったのは、各々が通じ合えないのに通じ合うことを信じたがるけれど、大人も子供もそれぞれがそれぞれにひとりとして描かれているということ。特に思春期の少年少女たちが見せる恋愛模様や人間関係は、社会や立場というオブラートに包まれた大人のそれよりもはるかに冷酷だ。そんな冷酷な感情の発露を経て、痛い目も見て、苦しまなければうまく大人にはなれないのも事実なんだろう。

大陸から台湾に来た外省人の孤独、少年少女の孤独、家族それぞれの孤独、いろんな孤独が相似形を描いてる映画に観えた。今の私的な関心が他者とのコミュニケートのあり方、相互作用、相互理解、成長過程における感情の発露の仕方や他者との関わり合い方、というところに集中しているから、こういう観方になったのだと思うけど、思春期真っ只中に観たらどうだったのかな。全く意味がわからなくて、歳をとるごとに思い出しては少しずつ見えてくる映画だったかもしれない。

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Rosas Fase 東京芸術劇場 2017.05.03

一昨年の『ドラミング』ぶりにローザス東京芸術劇場。今回は Fase と時の渦が上演されたけど、ケースマイケル本人が踊る Fase を観てきた。

スティーヴ・ライヒの楽曲で踊るダンスだけど、当日パンフのケースマイケルの言葉に「自分の音楽経験を振り付けにしようと試みています」とあるように、いわゆるダンスという言葉や踊りという言葉では表せない世界。音楽経験を肉体を通じ可視化しているのだと思った。Faseはライヒの音楽4曲からなる踊りだけれど、1曲目のPiano Faseは本当に観られてよかったと思う。


Fase - Anne Teresa De Keersmaeker & Michele Anne de Mey

映像でも二人のダンサーとその影が重なったり離れたりする様子はわかるけど、奥行きある舞台を観ると全く別物。ダンサーが舞台奥と手前を移動するときに影の具合が変わるのだけど、ライヒ楽曲で一つの旋律が二つに分かれ違うメロディになったり合わさったりという様子が見える。耳で聴くと同時にダンサーの動きや距離感を通じて旋律が見えるのだ。

二人のダンサーが腕を振り上げターンするたびに翻るドレスの裾はさざ波のようで、こちらに近づいたかと思えば遠ざかる。照明と影は観客の目を惑わせ、二人のダンサーが幾人にも増えたり減ったりして見える。演目が終わる頃には冷静に旋律と動きの関係を観察しながらも、夢中になるあまりトランスのような状態に陥っていた。

これは全く確証のない考察なんだけど、ローザスのダンスは数学や物理をわかる人だとより楽しめるんじゃないかと思う。ドラミングの時も思った。自分は物理の素養が全くないので勘ですが。

先日ヴッパタールのカーネーションも観たけれど、それぞれに違う素晴らしさ。コンテンポラリーダンスは言葉や音楽やあるいは他の何かを肉体の動きによって表すのだなと改めて思った。次は11月のバットシェバが楽しみで仕方ない。

ADDっぽい私が使っている安い腕時計

anonymousk.hatenablog.com

以前このようにアナログ腕時計を買ったことを書いたけど、当時買ったのはチープカシオ。実際腕につけることよりも机上にセットしてる時間の方が長かった。腕につけていると違和感があり神経質になってしまうので。

で、文字盤に12個数字があって秒針もある時計というのは私の時間管理にものすごく役立った。しかしチープカシオではカジュアルすぎる場面というのもやはりあるので、高くなくともぱっと見金属とわかる時計にしなくてはと思い色々と探してみた。

時計にお金をかけるのはなんか嫌なので、予算は5,000円まで。そして前回時計を探した時と同様に

  • 文字盤に12個アラビア数字が表記されてる
  • 長針短針秒針の3つが揃っている
  • 余計な装飾やロゴがない
  • 曜日・日付はなくても良い

という条件で探す。あとシルバーよりゴールドの方が肌馴染みが良く感じるのでゴールドが入ってるもの。で、これを買った

上記の条件を全て満たしていて、私が購入した時3,000円ちょっとだったので価格も申し分ない。文字盤は小ぶりだけど、数字が読みやすいので不便は感じない。高級感は全くないけど、時計って高級感を求めると青天井なので、失礼にならない範囲でちゃんとしてればいいと割り切っている。

プライベート仕事問わず時間管理をする上で、私にとって重要なのは時間の長短の可視化だった。デジタルではただの数字の情報としてしか理解できないけれど、アナログの文字盤を見れば時間が量なり面積なりになって見えてくる。大袈裟だけど生きる知恵だ。